50年代のハリウッド映画でみるナッソージャケットの着こなし
2016.02.20
フレッド・アステアなどが主演の1953年ハリウッドミュージカル映画「バンド・ワゴン/The Band Wagon」
出演者のジャック・ブキャナンが着ている2-tone Hollywood Jacketですが、いわゆるナッソージャケットの着こなしとしては、本来の役割を果たしているかの様な自然な流れの着替えが本編シーンにあります。
舞台から降りて王様の衣装からすぐに付き人が衣装を脱がせ、Hollywood Jacketを着せるシーンですが、この映画のストーリー演出は恐らく舞台俳優さんが控え室ですぐに本番の衣装にも着替えられる様にとりあえず待機用のジャケットに着替える様子。
たとえば格闘技の試合でガウンを着て待機するのと同じ感覚だったのではないかと思います。
ならばガウンでも良い気もするのですが、この映画はミュージカルなのでこのあと急に歌とダンスのシーンがあり、見栄えの良い2-tone Hollywood Jacketを選んだのではと思われます。
肌着の上から Hollywood Jacket、そしてVゾーンにはスカーフ!
まさに部屋でガウンを着てくつろぐ姿と同じバランスの着こなしです。
この映画が撮影された1953年は、まだロックンロールを中心とした若者文化も一般的に認知されていませんでした。今でこそ2トーンカラーのジャケットと云えば“ロカビリージャケット”の印象がありますが、実際には元々ハリウッドミュージカルやカントリー・ミュージックのシンガー達に愛用されていた経緯があります。当時のロックンロールシンガー達が着用していた事に間違いないとは言え、2トーンカラーのジャケットがロカビリーのイメージで定着するのは、ヨーロッパで50年代のロックンロールが再評価され始めた1970年代の終わり頃からでしょう。
Hollywood style jacketシーンの後はガウンが出てきますがスカーフを巻きソファーで寛いでいます。
靴はやはり履いたままです。
1940~50年代のハリウッドミュージカルらしいシーンですね。
この頃のHollywood style jacketにはこういったガウンに近いイメージがあったのでしょう。
テレビが普及し始めた1950年代前半には部屋でテレビを見るときに着るジャケットとしてガウンを「TV Jacket」と名付けている広告も見られます。
こういった境界線が曖昧で自由なデザインが多く登場した1950年代らしいネーミングですね。
同じ形でも“ナッソー”と呼んだり“ハリウッドジャケット”と呼ばれたりするのも、それだけ当時の売り文句が重要だったという事です。
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