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ラジオの普及とクルーナー【crooner】

2016.03.25

辞書などによるとクルーナーとは【crooner】
おさえた低い声でささやくように情緒をこめて歌う流行歌手。
ビング・クロスビーなどに代表される…
とあります。

自分はこのクルーナーと呼ばれる歌手達がお気に入りですが、ネット検索するとルディ・ヴァリー辺りが元祖の様です。
オペラに代表されるコンサートホールでマイクを使わなくても聴衆に聞こえる大きな声が出る発声法が元々は当時の流行歌の中心でした。

しかしマイクロフォンの普及によりマイクの特性を利用した歌唱法が1920年代後半辺りから浸透していき彼らはクルーナーと呼ばれます。
今では1920年代のクルーナー達の録音は簡単にyou-tubeなどで聴く事が出来ますが。
聴く限りクルーナー唱法は1930年代半ばから後半辺りで進化、確立されていく感じがします。
初期のビング・クロスビーの声はマイクの特性を利用しているとはいえ、力強く声量豊かな印象で本当に柔らい印象になるのは30年代後半だと思います。
なのでルディ・ヴァリーとその後のビング・クロスビーを比べるとクルーナーの定義が分からなくなってきます。

ルディ・ヴァリーの人気をみると最初クルーナーは当時のアイドル歌手的な要素で紹介されていた所がありました。
なので女性はクルーナーとは言わないのです。
それとラジオ放送の普及もクルーナーには大きく関係している様で、やさしい歌い方はラジオを聴いている女性達には近くで自分だけに囁いている様にも感じられセクシーだったのです。
1930年代にビングは自分のラジオ番組を持つようになり人気が出ますが、そこでもマイクロフォンを用いた効果的な歌唱法を確立していった様です。

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1938年のシアーズカタログを見ると安く小型なラジオも出てきてます。

このくらいのサイズだと自分の寝室にも一台置いてクルーナー達の声を独占して聴く気分を味わう事が出来ますね。

日本でも1970年代に若者中心に深夜のラジオ放送が流行りましたが、当時の女性達にクルーナーが流行っていったのも自分だけが独占している様なリスナーとの近い距離感、という点では似ているかも知れません。

初期のマイクロフォンによるラジオ放送は音量が大きすぎると音が割れてしますので必然的に生まれたという側面もありますがビングなどのソフトなのに豊かに感じられる声というのは簡単そうで難しく、元々声量がある人があえて柔らかく歌わないと巧く聞こえないのではと思います。

 

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1950年代のロックンロール時代は1920代~30年代のクルーナー時代よりは音響機材が発展していますが、クルーナーとは真逆の音割れを逆手にエレキギターなども割れた音での録音が出たり、ヴォーカルスタイルも割れた音で録音された物が売れたりしています。
50年代のリトル・リチャードはその代表格、面白い事に60年代に移籍して同じ曲を録音しても50年代録音の様な迫力は薄れています。
スペシャリティレーベルの声が割れた録音が自然で良いのです。
真空管時代の録音は割れた音もいま聴くとちょうど良い迫力に感じられます。
エルヴィスのハウンド・ドックにも同じ効果があります。
RCAの録音エンジニア達もロックンロールに対しての答えがないから偶発的に生まれた音割れも音楽の一部と考えてやさしい音で録らなかったのは素晴らしい判断でした。

その後エルヴィスも独自の表現でのクルーナースタイルが増えますがハウンド・ドックからは想像できないですね。

結局ビングもエルヴィスも歌唱力があるのに抑えの表現も出来るところがクルーナーたる所以なのでしょう。

 

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